行政書士加藤清正事務所
「相続」 母が残してくれた思い
幼い頃父母が離婚し、私は母がいつ亡くなったのか、いまも
知りません。日頃から相続手続きで人様のお世話をしていま
すから、調べればわかるのでしょうか、紺屋の白袴 というか
自分のことは後回しです。
そんな母の思い出話があります。
何時の頃だったか、もう何十年も昔、母の実家から顔も知ら
ない親族が私を訪ねてきました。母が残した実家の不動産が
あるのだが、売却処分する必要があり、書類に署名捺印して
ほしい、ということでした。
私の貧乏は、今や知る人ぞ知るところですが、当時は多少の
財産もあり、人に頼まれれば 何でも イヤとは言えない性格
ですから、もちろん すぐに書類を書いて、実印も 印鑑証明
書も お渡ししたのですが、今 自分が相続手続で人様のお
手伝いをさせていただく立場になって考えてみますと、当時
なくなった母が残してくれた不動産には、離婚して別れ別れ
になった子供(つまり 私 )の将来のためを思う母の真心が
こもっていたのだと思います。
別に財産に執着するわけではありませんが、亡き母の真心
に対して一片の思いもなく 書類にハンコを押してしまった
軽率さが悔やまれてなりません。
今 日々の仕事の中で大切にしたいのは、人と人の「思い」
です。亡くなった方の思い、残された方々の思い、人生の曲
がり角で悩み、苦しむ方々の思い・・・
先日、NHKのプロフェッショナルに登場された弁護士の村松
謙一先生にお目にかかる機会があり、村松先生の依頼者に
対する「思い」には あらためて感動いたしました。私も、村松
先生には遠く及びませんが、「思い」を大切に、仕事をしてゆき
たいと思います。